組織改革に抵抗勢力はつきもの!従業員を巻き込み、成功させる組織改革の進め方
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年8月20日
- 読了時間: 6分
中小企業の経営者が直面する課題の一つに、組織改革があります。市場環境や経営戦略の変化に対応するためには、組織内の変革が不可欠です。しかし、経営者が新たな取り組みを導入しようとする際、多くの場合、従業員からの反発や抵抗が生じます。この抵抗勢力にどう対処し、組織改革を効果的に進めるかが成功の鍵となります。本記事では、クルト・レヴィンの変革の三段階理論に基づき、組織改革の進め方について解説します。
なぜ組織改革は難しいのか?

組織改革が難しい理由の一つに、人間の心理が挙げられます。人は、変化を恐れる傾向があり、特に自分にとって都合の悪い変化に対しては、抵抗を示すことが多いです。また、組織には、長年培われてきた慣習や暗黙のルールが存在し、これらが新しい取り組みの妨げになることもあります。
さらに、組織改革には、時間と労力がかかります。短期間で目に見える成果を出すことは難しく、途中でモチベーションが低下してしまうメンバーも出てきます。
組織改革を成功させるために
組織改革を成功させるためには、従業員の理解と協力が不可欠です。従業員がなぜ改革が必要なのか、改革によってどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、共感を得る必要があります。
また、トップのコミットメントも重要です。経営者が率先して改革に取り組み、その姿勢を従業員に見せることで、組織全体の士気を高めることができます。
クルト・レヴィンの変革の三段階モデルとは?
クルト・レヴィンは、組織変革を進めるためのモデルとして、「解凍(Unfreezing)」「変革(Changing)」「再凍結(Refreezing)」の三段階を提唱しました。このモデルは、変革プロセスにおいてどのような段階を経るべきかを示すものであり、組織改革の効果的な進め方を理解するための重要なフレームワークです。
解凍(Unfreezing)
現状の認識と危機感の共有
組織改革を成功させるためには、まず現状の問題点を明確にし、組織全体でその危機感を共有することが必要です。経営者は、従業員に対して現在の業務プロセスや組織構造がいかに問題であり、どのようなリスクを抱えているかを丁寧に説明する必要があります。従業員が現状維持のリスクを理解し、変革の必要性を感じることで、初めて改革に対する心理的な「解凍」が始まります。
抵抗勢力の理解と対話
組織内には必ず、変革に対して抵抗を示す人々が存在します。彼らは現状を守りたいという心理や、新しいことに対する不安から変革に反対することが多いです。経営者は、これらの抵抗勢力の存在を否定するのではなく、彼らの意見や不安に耳を傾け、対話を通じて理解を深めることが重要です。抵抗勢力が何に不安を感じ、どのようなリスクを懸念しているのかを把握し、それに対する対策を講じることで、改革への協力を得る道が開けます。
変革(Changing)

ビジョンの提示と共有
組織改革の「変革」段階では、経営者が具体的な改革ビジョンを提示し、組織全体でそのビジョンを共有することが求められます。このビジョンは、組織が目指すべき方向性を示し、従業員が改革を受け入れやすくするための指針となります。また、ビジョンが共有されることで、組織内の一体感が生まれ、従業員が改革に対して前向きに取り組むモチベーションを持つようになります。
段階的な変革の実施とフィードバック
組織改革は一度にすべてを変えるのではなく、段階的に進めることが重要です。改革の各ステップごとに目標を設定し、進捗を測定することで、従業員の不安を軽減し、改革の成功率を高めることができます。また、改革の進行状況に応じて、フィードバックを取り入れながら柔軟に対応することが大切です。従業員からの意見や改善提案を受け入れることで、組織全体が改革に参加しているという意識が芽生え、抵抗を和らげる効果も期待できます。
教育とサポートの提供
新しい体制やプロセスが導入される際には、従業員がその変化に適応できるよう、十分な教育とサポートを提供することが不可欠です。従業員が新しいスキルを習得し、改革の目的や効果を理解することで、変革への不安が解消され、積極的に改革に取り組む姿勢が生まれます。特に、中小企業では限られたリソースの中で行われる改革が多いため、適切なトレーニングプログラムや支援体制を整えることが重要です。
再凍結(Refreezing)
新しい組織文化の定着
組織改革が成功し、新たな体制やプロセスが導入された後は、それらを組織文化として定着させる段階が「再凍結」です。新しい文化が組織の中で根付き、日常業務に自然と取り入れられるようになることで、改革の成果が持続します。経営者は、新たな文化や価値観を組織全体に浸透させるために、リーダーシップを発揮し、継続的にコミュニケーションを図ることが求められます。
成功事例の共有と祝福
組織改革の成功を定着させるためには、成功事例を積極的に共有し、従業員と共に成果を祝うことが重要です。成功事例を共有することで、他の従業員も改革に対して前向きな姿勢を持つようになり、組織全体での一体感が強まります。また、成功を祝うことは、従業員のモチベーションを高め、次なる変革への準備を促進する役割も果たします。
継続的な改善の取り組み
最後に、組織改革は一度完了したら終わりではなく、継続的な改善が求められます。市場環境や組織内外の状況は常に変化しており、それに対応するための柔軟性が必要です。定期的に組織の状況を見直し、新たな課題に対して迅速に対応することで、組織の成長を維持し、競争力を高めることができます。
抵抗勢力への対処法

組織改革において、抵抗勢力は避けられない存在です。しかし、これらの抵抗を無視するのではなく、積極的に対処することで、改革の成功率を高めることが可能です。以下は、抵抗勢力への具体的な対処法です。
対話と説得
抵抗勢力に対しては、対話を通じて彼らの懸念や不安を理解し、その上で説得を行うことが重要です。彼らが改革の必要性を理解し、納得することで、協力を得られる可能性が高まります。
役割の明確化
抵抗勢力には、組織改革における具体的な役割を与えることも有効です。彼らが責任を持って改革に取り組むことで、抵抗から積極的な協力へと変わることがあります。
インセンティブの提供
組織改革に協力することで得られるインセンティブを提供することも、抵抗勢力を取り込む手段として有効です。報酬や昇進の機会など、個人の利益に直結するインセンティブを提示することで、抵抗を和らげることができます。
段階的な導入
抵抗勢力が変革に対して強い不安を抱いている場合、段階的に改革を導入することで、彼らの負担を軽減し、改革の進行をスムーズにすることができます。
まとめ
中小企業の経営者が組織改革を成功させるためには、クルト・レヴィンの変革の三段階モデルに基づいて、計画的に改革を進めることが重要です。解凍段階で従業員の理解と協力を得、変革段階でビジョンを共有し、再凍結段階で新たな文化を定着させることで、組織全体が改革の成果を享受することができます。また、抵抗勢力への対処を怠らず、彼らを組織改革のプロセスに巻き込むことで、改革の成功率を高めることができるでしょう。組織改革は困難なプロセスですが、正しいアプローチをとることで、経営者としてのビジョンを実現し、組織の成長を促進することが可能です。
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