人手不足の解決策!紹介予定派遣とは? ~メリット・デメリット、注意点まで徹底解説~
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年10月16日
- 読了時間: 6分
近年、多くの企業が抱える課題の一つに「人手不足」が挙げられます。特に中小企業においては、新しい人材を確保するのが難しく、人材不足が企業の成長を阻害する大きな要因となっています。そんな中で注目されているのが「紹介予定派遣」という制度です。この制度は、企業が自社に合った人材を効率よく見つけ、定着させるための選択肢として活用されています。今回は、紹介予定派遣について詳しく説明し、そのメリット・デメリット、そして利用する際の注意点について解説します。
1. 紹介予定派遣とは?

紹介予定派遣とは、まず一定期間(最長6か月間)派遣社員として働いてもらい、その後、企業と派遣社員の双方の合意のもとで正社員や契約社員として正式に雇用する仕組みです。この制度は、従来の派遣労働とは異なり、派遣期間終了後に直接雇用を前提としています。そのため、企業側は実際の働きぶりを見たうえで採用を決定でき、人材のミスマッチを防ぐことができるのが大きな特徴です。
派遣会社が事前にスクリーニングを行い、企業の要望に合った候補者を紹介します。派遣期間中、企業は派遣社員のスキルや適応能力を確認し、派遣社員も企業の文化や仕事環境に適合するかどうかを見極めます。そのため、双方が納得した上で正規雇用に移行できるという、企業と人材の双方にメリットがある制度です。
2. 紹介予定派遣のメリット
紹介予定派遣には、企業にとって多くの利点があります。以下に、その主なメリットをいくつか紹介します。
(1) 人材のミスマッチを防ぐ
従来の採用方法では、面接や書類選考の段階で応募者のスキルや企業との適性を判断しなければならず、採用後に「思ったような人材ではなかった」といったミスマッチが発生することも少なくありません。紹介予定派遣では、派遣社員として一定期間働いてもらうことで、実際の業務能力や職場とのフィット感を確認できるため、採用のミスマッチを防ぐことが可能です。
(2) 即戦力の人材を確保できる
派遣会社が事前に候補者を選定して紹介するため、企業は自社に必要なスキルを持った即戦力の人材を確保しやすくなります。特に中途採用市場においては、即戦力の人材を求める企業が多いため、紹介予定派遣は効率的な方法です。
(3) 採用コストの削減
一般的な採用活動では、求人広告費や人材紹介料、面接にかかる時間と労力など、さまざまなコストが発生します。しかし、紹介予定派遣を利用すれば、派遣会社が候補者の選定を行うため、企業側の採用活動にかかる負担を軽減することができます。また、派遣期間中に採用を見送ることも可能なため、最終的に適切な人材を見つけるまでのコストも最小限に抑えることができます。
(4) 雇用リスクの低減
紹介予定派遣では、派遣期間中は派遣会社が派遣社員と雇用契約を結んでいるため、企業は労働契約上のリスクを負いません。万が一、派遣社員が業務に適応できない場合でも、企業側は派遣期間終了後に直接雇用を行わない選択ができるため、無駄な雇用リスクを軽減することが可能です。
3. 紹介予定派遣のデメリット
一方で、紹介予定派遣にはいくつかのデメリットも存在します。企業が利用を検討する際には、これらの点も十分に考慮する必要があります。
(1) コストの発生
派遣期間中は、派遣社員の給与や派遣会社への手数料が発生します。派遣会社によっては、紹介予定派遣に関する追加の費用がかかる場合もあり、これが企業にとっては一定の負担となることがあります。特に中小企業では、これらのコストを事前にしっかりと見積もり、予算に組み込むことが重要です。
(2) 派遣期間の短さ
紹介予定派遣の派遣期間は最長6か月と法律で定められており、短期間で適性を判断しなければなりません。企業によっては、この期間が十分ではないと感じることもあります。また、6か月以内に判断を下さなければならないため、慎重な採用が求められる業界や職種では、この制限がデメリットとなることがあります。
(3) 採用に至らない可能性
紹介予定派遣では、派遣社員が企業の期待に応えられない、または企業側が派遣社員のスキルや適性に満足しない場合、採用に至らないことがあります。この場合、再度新たな人材を探す必要があり、時間とコストがかかることがあります。特に急な人手不足を補うために紹介予定派遣を利用する企業にとっては、これがデメリットとなる可能性があります。
4. 紹介予定派遣を利用する際の注意点

紹介予定派遣を成功させるためには、企業がしっかりと準備を整え、適切な運用を行うことが重要です。ここでは、紹介予定派遣を利用する際の注意点について解説します。
(1) 受け入れ体制を整える
紹介予定派遣を利用する場合、まず企業が派遣社員を受け入れるための体制を整える必要があります。具体的には、派遣社員がスムーズに業務に取り組めるように、業務内容の明確化や適切な指導体制の構築が求められます。これが不十分だと、派遣社員が十分なパフォーマンスを発揮できず、最終的に正社員として採用できない結果になることもあります。
また、派遣社員が企業文化や業務環境に適応できるかどうかも重要です。社員同士のコミュニケーションやサポート体制が整っていないと、派遣社員が孤立してしまい、離職につながる可能性もあります。そのため、企業内でのサポート体制やコミュニケーションをしっかりと整備しておくことが大切です。
(2) 働く環境を整備する
働きやすい環境が整っていない企業では、派遣社員が業務に適応できず、最終的に離職に至るリスクが高まります。具体的には、労働時間の適正管理や職場の衛生環境、業務負担のバランスなどが整っているかを確認する必要があります。特に紹介予定派遣では、派遣期間中に企業の働く環境を見極めることが重視されるため、職場の改善が遅れると、優秀な人材を定着させることが難しくなります。
(3) 派遣会社との連携を強化する
紹介予定派遣では、派遣会社との連携が非常に重要です。派遣会社は候補者を紹介するだけでなく、派遣期間中も企業と派遣社員の双方に対してサポートを行います。企業側は、派遣社員の業務適応状況やフィードバックをこまめに派遣会社と共有し、適切な対応を講じることが求められます。もし派遣社員に何らかの問題が生じた場合、迅速に対応することで、問題の解決や人材の定着につながります。
5. まとめ
紹介予定派遣は、人材不足に悩む企業にとって有効な解決策の一つです。即戦力の人材を確保し、採用のミスマッチを防ぐことができるため、特に中小企業にとっては非常にメリットの大きい制度です。しかし、コスト面や派遣期間の短さといったデメリットもあるため、導入前には十分な準備と計画が必要です。
受け入れ体制の整備や働く環境の見直し、派遣会社との密な連携を行うことで、紹介予定派遣を効果的に活用し、企業の人材不足を解消していくことが可能です。
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