販路拡大に悩む経営者へ!販路拡大したいならロイヤルカスタマーを育てろ!
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年8月20日
- 読了時間: 8分
中小企業の経営者が販路拡大を考える際、まず思い浮かべるのは新規顧客の獲得でしょう。広告やSNSなどを活用し、より多くの消費者にリーチしようとするのは当然の流れです。しかし、新規顧客の獲得には多くのコストがかかり、その効果が一時的なものに終わることも少なくありません。それに比べ、既存の顧客、特に「ロイヤルカスタマー」と呼ばれる顧客を育てることが、販路拡大の鍵となる可能性が高いのです。本記事では、なぜロイヤルカスタマーを育てることが販路拡大に効果的であるのか、その理由と具体的な方法について解説します。
新規顧客獲得のコストとリスク
まずは、新規顧客獲得のコストについて考えてみましょう。新規顧客を引き付けるためには、広告費用やマーケティング戦略にかける時間とリソースが必要です。しかし、それらのコストをかけても、必ずしも顧客がリピーターになるとは限りません。新規顧客は、企業の製品やサービスを初めて利用するため、その信頼関係はゼロからのスタートです。また、競合他社の製品やサービスとも比較されるため、顧客が他社に流れてしまうリスクもあります。
さらに、新規顧客を獲得するためのキャンペーンやプロモーションは、一時的な売上の向上には寄与するものの、長期的な顧客基盤の強化には必ずしもつながらないことが多いです。短期的な売上に依存することで、経営が不安定になるリスクも生じます。
ロイヤルカスタマーが販路拡大に繋がる理由

ロイヤルカスタマーを育てることが、なぜ販路拡大に繋がるのでしょうか?その理由を以下にまとめます。
1. 安定した収益源としての役割
ロイヤルカスタマーは、企業にとって非常に安定した収益源となります。彼らは頻繁に商品やサービスを利用し、信頼関係が強固であるため、他社に乗り換える可能性が低いです。このような安定した収益を確保することで、企業はリスクを抑えながら事業を拡大するためのリソースを蓄えることができます。
例えば、新規プロジェクトや新商品開発、あるいは新たな市場への進出など、販路拡大のための戦略を実行する際に、リスクを取りやすくなります。ロイヤルカスタマーからの継続的な収益があることで、事業展開の選択肢が増え、長期的な視点での成長戦略を描きやすくなるのです。
2. 口コミとリファラルによる自然な顧客拡大
ロイヤルカスタマーは、企業の大使とも言える存在です。彼らは自分の経験に基づいて、周囲に企業の製品やサービスを推薦します。この口コミやリファラル(紹介)は、企業にとって非常に価値があります。なぜなら、消費者は広告や宣伝よりも、信頼できる知人や友人からの推薦を重視する傾向があるからです。
こうした口コミによって新規顧客が自然に増加することで、販路拡大が進むと同時に、新規顧客獲得にかかるコストを削減できます。さらに、この新規顧客もロイヤルカスタマーからの推薦を通じて来店するため、初めから企業への信頼感が高く、ロイヤルカスタマーに転じる可能性が高いです。
3. 高い顧客ライフタイムバリュー (CLV)
顧客ライフタイムバリュー(Customer Lifetime Value: CLV)は、顧客が生涯にわたって企業にもたらす価値を指します。ロイヤルカスタマーは、一般の顧客と比較してCLVが非常に高く、長期間にわたって安定的な収益をもたらします。
CLVが高いということは、1人の顧客に対して投入したコストに対して、長期間にわたって高いリターンが期待できることを意味します。企業は、この収益をもとに、さらなる販路拡大のための投資を行うことができ、結果として持続的な成長が可能になります。
4. ブランドロイヤルティの向上と差別化
ロイヤルカスタマーは、企業のブランドに対する強いロイヤルティを持つため、ブランドの支持者としての役割を果たします。彼らの存在は、企業が市場でのポジションを強化し、競合他社と差別化するための重要な要素となります。
例えば、ロイヤルカスタマーが多い企業は、そのブランドが特定の市場やコミュニティで高い評価を得ている証拠です。こうした評判は、新たな市場や地域への拡大を図る際に、企業にとって大きなアドバンテージとなります。顧客がブランドに忠誠を誓うことで、新しい販路でもそのブランドが受け入れられやすくなるのです。
5. 価格競争からの脱却
ロイヤルカスタマーは、企業の製品やサービスの価値を深く理解しているため、価格よりも品質やサービスを重視する傾向があります。そのため、企業はロイヤルカスタマーをターゲットにしたマーケティング戦略を展開することで、価格競争に巻き込まれることなく、自社の価値を提供し続けることができます。
価格競争から脱却することで、企業は収益率を維持しやすくなり、これにより新たな販路開拓のための余力を生み出せます。ロイヤルカスタマーを基盤にしたビジネスモデルは、持続可能で安定した成長を可能にするため、企業の販路拡大に直結するのです。
6. 顧客フィードバックを基にした改善と革新
ロイヤルカスタマーは、企業の製品やサービスに対して積極的にフィードバックを提供する傾向があります。企業はこのフィードバックを活用して、製品やサービスの改善を図ることができます。顧客のニーズや期待に応える形での改善や新しい提案は、他の顧客層にもアピールしやすく、販路拡大に貢献します。
また、ロイヤルカスタマーとの対話を通じて得られる洞察は、新たな市場ニーズの発見や製品開発のヒントにもつながります。これにより、企業は販路を拡大しながらも、既存の顧客満足度を高めることができるのです。
7. ブランドアンバサダーとしての活用
最後に、ロイヤルカスタマーは、ブランドアンバサダーとして活用できる可能性があります。彼らは企業やブランドのファンであり、自ら進んでその良さを広める力を持っています。ロイヤルカスタマーをアンバサダーとして起用することで、企業は彼らのネットワークを活用し、新たな販路を開拓することができます。
ブランドアンバサダーが活動することにより、企業は新規顧客に対して信頼感を持って迎えられるだけでなく、マーケティング費用の削減にもつながります。こうした形での販路拡大は、持続可能な成長を支える重要な要素となるのです。
ロイヤルカスタマーを育てる方法

それでは、どのようにしてロイヤルカスタマーを育てることができるのでしょうか?ここでは、具体的な方法をいくつか紹介します。
1. 卓越した顧客体験を提供する
ロイヤルカスタマーを育てるための基本は、顧客に対して一貫して高品質な体験を提供することです。製品やサービス自体の質はもちろん、購入プロセスやアフターサポートの充実も重要です。顧客が満足できる体験を提供することで、信頼関係が深まり、リピーターへとつながります。
2. パーソナライズされたコミュニケーション
顧客一人ひとりのニーズや嗜好に合わせたパーソナライズドなコミュニケーションを行うことも、ロイヤルカスタマーを育てるために有効です。例えば、購入履歴や顧客データをもとに、個別のおすすめ商品やサービスを提案することで、顧客は自分が特別扱いされていると感じ、ロイヤルティが高まります。
3. ロイヤルティプログラムの活用
ロイヤルティプログラムを導入することで、顧客のリピート率を高めることができます。ポイント制度やメンバー限定の特典、バースデーキャンペーンなど、顧客が企業と長期的に関わるインセンティブを提供することで、ロイヤルカスタマーを育てることができます。
4. 顧客フィードバックを積極的に活用する
顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それを基にサービスや製品の改善を行うことも重要です。顧客の声を真摯に受け止め、その意見を反映させることで、顧客は企業に対する信頼感を深めます。また、フィードバックをもとに改善を行う姿勢は、顧客との対話を重視する企業としてのブランド価値を高める効果もあります。
5. 顧客と企業の共通価値を創造する
ロイヤルカスタマーを育てるためには、顧客と企業が共通の価値観や目標を共有することが重要です。例えば、環境保護や社会貢献活動など、企業の理念に共感する顧客は、その企業を応援し続ける可能性が高いです。このように、顧客と企業が共に目指す未来を共有することで、強固なロイヤルティが生まれます。
ロイヤルカスタマー育成で成功している事例

神奈川県で地元密着型の経営を続けているベーカリーでは、地域に根差した経営を通じて、地元での知名度と顧客の支持を確立して安定した売上を維持しています。
こちらのベーカリーでは、毎朝焼き立てのパンを提供するだけでなく、顧客との対話を大切にし、顧客の声を反映した新商品を次々と開発しました。また、定期的にパン教室を開催し、地域住民が店舗に親しみを持てるような取り組みも行っています。これにより、顧客が単なる消費者から、店舗を支えるコミュニティの一員へと変わり、強いロイヤルティを持つ顧客を多く育てました。
さらに地域イベントへの参加や、地元の学校と連携した活動も行うことで、地元のロイヤルカスタマー層を厚くし、外部からの顧客も取り込むことに成功しています。
まとめ
ロイヤルカスタマーを育てることは、単に顧客を維持するだけでなく、企業の販路拡大や市場競争力の強化に直結します。新規顧客獲得に頼らず、既存顧客との強固な関係を基盤とすることで、企業は長期的な成長を実現できるのです。ロイヤルカスタマーの力を最大限に活用し、持続可能な販路拡大を目指してください。
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