お金の価値は一定ではない!?心の家計簿で賢くお金と向き合う
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年10月28日
- 読了時間: 6分
私たちは毎日の生活の中でお金を使い、貯めることを考えていますが、実は「お金の価値」はその時々で変わっていることをご存じでしょうか?多くの人が「お金は絶対的な価値を持つもの」と考えがちですが、実際には私たちの心理や環境によりその価値の感じ方は変わっているのです。今回は、行動経済学で注目される「メンタルアカウンティング(心の家計簿)」について解説し、どのようにこの概念を活用して賢くお金を使い、貯めることができるのかを考えていきます。
お金の価値が一定ではない理由とは?

お金は一見、どのような場面でも同じ価値を持っているように思えますが、実はその価値は心理的な影響を受け、異なる意味合いを持つことがあります。これを「相対的価値」とも呼びます。たとえば、10,000円を「遊び用」に使うのか「生活費」に使うのかで感じる重みが変わったり、ボーナスで得た10万円と給与で得た10万円に対する心理的な価値の違いがあったりするのも、相対的価値の一例です。
行動経済学では、この「お金の価値が異なる」という現象が人々の意思決定に大きく影響することがわかっており、これを説明する概念の一つが「メンタルアカウンティング(心の家計簿)」です。
行動経済学で注目されるメンタルアカウンティング(心の家計簿)とは?
メンタルアカウンティングとは、私たちが「お金」を異なる「カテゴリ」に分けて管理し、それぞれのカテゴリに応じて異なる価値を見出すことを指します。例えば、「日常の生活費用」、「旅行のための貯金」、「将来のための投資資金」など、私たちは無意識のうちにお金を用途別に分け、異なる重要性や価値を与えています。これは、家計簿や銀行の預金口座のように明確に区分されているわけではなく、私たちの「心の中の家計簿」であり、そのため「心の家計簿」とも呼ばれます。
メンタルアカウンティングの例
例えば、次のような状況を考えてみましょう。
給料からの10万円:日々の生活費や将来への貯蓄に割り当てられ、しっかりと管理される傾向があります。
宝くじで当たった10万円:特別な収入と感じやすく、贅沢な食事や旅行に使いたくなるケースが多いです。
同じ10万円でも、稼ぎ方や得た状況によって「使っても良い」と感じる度合いや「貯めておくべき」と考える意識が変わるのです。このように、私たちの心の家計簿は「お金の価値」を条件によって区別し、異なる感覚を与えているのです。
心の家計簿が生むメリットとデメリット
心の家計簿は、ある意味で「節約」や「貯金」を支える役割を果たしていますが、その一方で、合理的でないお金の使い方を生む原因にもなります。ここでは、心の家計簿がもたらすメリットとデメリットを見てみましょう。
メリット
貯金・節約の意識を持ちやすい:メンタルアカウンティングによって、特定の用途ごとに予算を意識できるため、使いすぎを防ぎ、自然と節約する習慣が生まれやすくなります。
目標に対するモチベーションを維持できる:旅行やマイホームのための貯金といった「特定の目的」がある場合、そのためのお金を使わずにとっておく意識が強まるため、目標に向けたお金の貯蓄がしやすくなります。
デメリット
過剰な支出の原因になることも:心の家計簿は「特別な収入」や「予想外の収入」に対して「ご褒美感覚」での支出を促すことがあるため、不要な支出が増える可能性があります。
お金の管理が複雑化しやすい:メンタルアカウンティングによりカテゴリを分けすぎると、全体の収支が把握しづらくなり、結果的に非効率なお金の使い方になる場合があります。
心の家計簿を賢く活用する方法

では、私たちが「心の家計簿」を活用してお金の使い方を賢くコントロールするには、どのような方法があるのでしょうか。以下にいくつかのポイントをご紹介します。
1. 大まかなカテゴリーを設定する
メンタルアカウンティングは細かく分けすぎず、大まかなカテゴリにとどめることが大切です。「生活費」「趣味・娯楽費」「将来の貯蓄」といった大きな項目に分けることで、全体の収支を把握しやすくなります。これにより、予算内での支出を意識し、自然と無駄遣いを抑えることができます。
2. 特別な収入にもルールを設ける
ボーナスや宝くじといった特別な収入については、ルールを設けておくことで衝動的な支出を防ぐことが可能です。たとえば、特別収入があった場合は「半分は貯金」「半分は好きに使う」というようなルールを設定しておけば、貯蓄もしつつ、楽しむためのお金も確保でき、バランスの取れたお金の管理がしやすくなります。
3. 自分にとっての「満足度の高い使い方」を見つける
心の家計簿を活用するためには、「自分が本当に満足できる使い方」を把握することも重要です。例えば、友人との食事や旅行が大きな満足感をもたらす場合、それらにお金を使うことで生活の質が向上し、逆に不要な買い物や無駄遣いが減るでしょう。自分にとっての満足感を意識することで、無駄な支出を減らし、メリハリのあるお金の使い方が実現します。
心の家計簿を活用して賢く貯める方法
心の家計簿を理解し、お金を賢く使うだけでなく、将来的な資産形成にも役立てていく方法を考えていきましょう。ここでは、具体的な貯金・資産形成の方法をご紹介します。
1. 自動化を利用した積立貯金
日々の支出の中で意識しなくても貯金ができるように、給与口座から自動的に積立貯金を設定しておく方法が有効です。あらかじめ決めた金額を定期的に積み立てることで、「貯金用のカテゴリ」を自然に増やし、無理なく資産を増やせます。
2. 目的別の貯蓄口座を持つ
心の家計簿を反映させた形で「旅行用口座」「教育資金口座」など、目的別の貯蓄口座を持つこともおすすめです。これにより、貯金が可視化され、目標達成のモチベーションも高まります。
3. 投資信託や株式投資を活用する
将来のために資産を増やしたい場合、投資信託や株式投資を組み合わせることも賢い方法です。貯蓄だけでなく、心の家計簿の中に「運用カテゴリ」を設け、無理なくリスク管理をしながら資産を増やす工夫が可能になります。
まとめ
メンタルアカウンティング(心の家計簿)を理解し活用することで、私たちは心理的な価値の偏りに左右されず、バランスの取れたお金の使い方や貯蓄ができるようになります。大まかなカテゴリーに分け、特別な収入にルールを設け、満足度の高い使い方を見つけることで、無駄遣いを防ぎ、メリハリのあるお金の管理が実現します。
さらに、心の家計簿を活用した積立貯金や資産運用も視野に入れることで、長期的な資産形成につなげることが可能です。心理的な傾向を理解し、お金の使い方を賢くコントロールすることで、将来のための資産も着実に増やしていきましょう。
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