香りマーケティングで売上拡大!嗅覚に訴えかける販促戦略
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年8月16日
- 読了時間: 5分
はじめに
近年、多くの企業が視覚効果を利用した販促活動を行っています。しかし、まだ嗅覚に訴える販促を導入している企業は少ないのが現状です。実は、嗅覚は五感の中で最も強く記憶と感情に結びついており、購買行動に大きな影響を与える可能性があります。そこで今回は、香りや匂いを使った「セントマーケティング」による販売促進の方法について解説します。
セントマーケティングとは

セントマーケティングとは、嗅覚にアプローチするマーケティング手法です。消費者が特定の匂いを嗅ぐと、その香りに関連する感情や記憶が呼び起こされるため、商品やサービスに対する好感度や購買意欲を高める効果があります。例えば、パン屋から漂う焼きたてのパンの香りは、空腹感を刺激し、購入意欲を高めることが知られています。
嗅覚が購買行動に与える影響
嗅覚は、五感の中でも最も原始的な感覚の一つです。嗅いだ香りは、脳の扁桃体や海馬に直接伝わり、感情や記憶を呼び起こします。良い香りは、リラックス効果や幸福感をもたらし、購買意欲を高めることが期待できます。
1. 情緒的な反応を引き起こす
記憶を呼び覚ます
嗅いだ香りは、過去の経験や感情と結びつき、特定の記憶を呼び起こすことがあります。例えば、子供の頃に祖母が作ってくれたアップルパイの香りは、温かい家庭の記憶を呼び覚まし、幸福感をもたらすでしょう。
感情を揺さぶる
香りは、私たちの感情に直接働きかけます。例えば、ラベンダーの香りはリラックス効果があり、ストレスを軽減するのに役立ちます。一方、柑橘系の香りは、爽快感を与え、活力を与えてくれます。
ブランドイメージを強化する
特定の香りをブランドの象徴とすることで、顧客に強い印象を与えることができます。例えば、高級な香水ブランドは、そのブランド独自の香りを開発し、ブランドイメージを確立しています。
2. 購買意欲を高める
ポジティブな感情を引き起こす
良い香りは、顧客の気分を良くし、購買意欲を高める効果があります。
衝動買いを促す
気に入った香りのお菓子やコスメなどは、衝動買いにつながる可能性があります。
店舗のイメージアップ
店舗内に心地よい香りが漂っていると、顧客は居心地の良さを感じ、より長く滞在する傾向があります。
3. 購買行動を促す

商品の魅力を高める
商品に合わせた香りを付けることで、商品の魅力を高めることができます。例えば、アロマキャンドルに癒やしの香りを付けることで、リラックス効果をアピールできます。
商品との関連性を強化する
商品の香りを、ブランドイメージやターゲット層に合わせたものにすると、商品との関連性を強化し、購買意欲を高めることができます。
試食や試飲の促進
食品店や飲食店で、商品の香りをアピールすることで、試食や試飲を促し、購入に繋げることができます。
セントマーケティングの導入方法
ターゲットと目的の明確化
まず、どのような顧客層をターゲットにするかを明確にします。次にターゲットにどのような行動を起こしてもらいたいのかという「目的」を明確にします。
これにより、ターゲットと目的に合わせた最適な香りを選択することができます。
香りの選択
ターゲットと目的に合った香りを選択します。ターゲットに気持ちをすっきりさせたい、落ち着かせたいなどが目的の場合は、ジャスミンやラベンダーの香りなどを店内に広がるようにします。
飲食店などの場合は、メインの商材の匂いが店内に広がるような、調理方法や店舗設計を意識する必要があります。
環境の整備
香りを使用する環境を整備します。香りが均一に広がるように、香りの発散装置を適切に配置します。
効果の測定と調整
香りの効果を測定し、必要に応じて調整します。顧客の反応や購買行動の変化を分析し、最適な香りと濃度を見つけます。
セントマーケティングの事例

事例1: コーヒーショップの売上向上
あるコーヒーショップでは、全自動のエスプレッソマシンから半自動のマシンに切り替えることで、店舗内にコーヒーの香りを充満させる戦略を取りました。全自動マシンは操作が簡単で効率的ですが、香りを十分に放出しないため、店内の雰囲気を高める効果が限定的でした。一方、半自動マシンは操作が必要で、抽出過程で生じる香りが店内に広がるため、顧客に対して「本格的で新鮮なコーヒーが楽しめる」という印象を与えます。
この取り組みの結果、コーヒーショップでは客数と売上が増加しました。顧客は香りによってリラックスし、店内での滞在時間が延びたため、コーヒーだけでなく、フードやスイーツの追加注文も増えました。この事例は、香りが顧客の購買行動に与える影響力を示す好例です。
事例2: 映画館のポップコーン販売
映画館においても、香りを活用したセントマーケティングが効果を発揮しています。多くの映画館では、ポップコーンを販売するエリアでバターやキャラメルの香りを放出することで、顧客の嗅覚を刺激しています。この香りは、映画を見ながら何かを食べたいという欲求を強め、ポップコーンやドリンクの販売促進に寄与しています。
さらに、ポップコーンの香りは、映画館での楽しい体験を想起させ、次回来館時の期待を高める役割も果たしています。このように、香りは単にその場での購買行動を促すだけでなく、ブランドイメージの強化にもつながります。
現在では、飲食店に限らず、水族館や航空会社など様々な業態でセントマーケティングが取り入れられています。
おわりに
セントマーケティングは、視覚に訴える従来のマーケティング手法とは異なり、嗅覚を通じて消費者の感情や記憶に働きかけることで、強力な販促効果をもたらします。香りをうまく活用することで、消費者の購買意欲を高め、売上を拡大する可能性があります。中小企業の経営者の皆様も、ぜひセントマーケティングを検討してみてはいかがでしょうか。
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