飲食業界の人手不足解消法!飲食業で使えるデジタルツールとは?
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年10月10日
- 読了時間: 7分
はじめに

日本の飲食業界は長年にわたり、厳しい人手不足に直面しています。特に2020年以降、パンデミックの影響や経済の変動によって、さらなる労働力不足が問題化してきました。人手不足は業務の効率化やサービスの質に悪影響を与え、経営の持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。この記事では、飲食業界の人手不足の背景を探り、その解消に役立つデジタルツールについて解説します。さらに、デジタルツールを導入する際の注意点についても触れていきます。
飲食業界での人手不足の背景
まず、飲食業界が直面している人手不足の主な要因を理解することが重要です。以下にその背景を説明します。
1. 少子高齢化と労働力不足
日本全体で少子高齢化が進行しており、特に労働集約型の飲食業界では、この問題が深刻化しています。若年層の労働力が減少し、飲食店を支えるパートタイム労働者やアルバイトが確保しにくくなっているのです。また、高齢者が労働市場に参入する機会はあるものの、飲食業のような体力を必要とする仕事は敬遠されがちです。
2. 労働環境の過酷さ
飲食業界の労働環境は、長時間労働や不規則なシフトが当たり前とされているため、これが人材の定着を妨げる要因となっています。多くの従業員が、より良い待遇やワークライフバランスを求めて他の業種に転職しているのが現状です。
3. 給与水準の低さ
飲食業界の給与水準は他の業界と比べて低く、特に非正規雇用の従業員にとって魅力的な給与ではない場合が多いです。低賃金のままで人材を確保しようとすると、優秀な人材が集まらず、人手不足がさらに深刻化します。
4. 働き方改革への対応
政府の働き方改革により、長時間労働の是正や適正な労働時間の管理が求められるようになり、従業員を増やす必要性が高まっています。しかし、従業員を増やす余裕がない中小の飲食店では、この改革に対応することが難しく、結果として人手不足がさらに深刻化するという負のスパイラルが発生しています。
飲食業界で使えるデジタルツール
こうした背景を踏まえ、飲食業界で人手不足を解消するための対策として、デジタルツールの導入が注目されています。2024年8月時点で、飲食業界で活用できる主要なデジタルツールには以下のようなものがあります。
1. POSシステム(Point of Sale)
POSシステムは、レジでの売上データを管理するための基本的なツールですが、最近のPOSシステムはそれ以上の機能を提供しています。これには、在庫管理、従業員のシフト管理、顧客データの蓄積などが含まれます。これにより、オーダーのミスを減らし、スムーズな会計業務が可能になります。また、クラウドベースのPOSシステムを導入することで、店舗外からでもデータにアクセスしやすく、複数店舗の管理も効率的に行うことができます。
2. オーダー管理システム(デジタルオーダーシステム)
デジタルオーダーシステムは、テーブルでの注文やモバイルデバイスを通じて注文を受けるためのシステムです。タブレットやスマートフォンを利用して、顧客が自分で注文を入力することで、従業員の負担を軽減することができます。このシステムは、特に注文数が多い繁忙期に有効で、人的ミスの削減にも寄与します。また、キッチンとの連携もスムーズになり、オーダーの遅延やミスを防ぐことができます。
3. 自動配膳ロボット
最近では、飲食店で自動配膳ロボットの導入が進んでいます。ロボットは、料理をテーブルまで運ぶ業務を担うことができ、特に大型店舗やファミリーレストランなどで効果を発揮します。ロボットを導入することで、従業員はより付加価値の高い業務に専念できるため、人手不足の解消に直結します。また、話題性があり、顧客に新しい体験を提供することでリピーターの増加にもつながる可能性があります。
4. スタッフシフト管理アプリ
シフト管理アプリは、従業員のシフトスケジュールを簡単に作成・管理できるツールです。クラウドベースのアプリを使用することで、従業員が自身のスマートフォンからシフトの確認や変更依頼を行うことができ、管理者はリアルタイムでシフトの調整が可能になります。また、シフトの欠員が出た場合に、通知機能を使って即座に補充を行うこともでき、急な欠勤にも迅速に対応できます。
5. デリバリー・モバイルオーダーアプリ
デリバリーやモバイルオーダーのアプリは、特にコロナ禍以降、飲食業界で急速に普及しています。これらのアプリは、顧客が自宅や職場から注文できるため、店舗でのオーダー管理にかかる労力を削減できます。また、モバイルオーダーは店舗内でも利用されており、顧客がテーブルでQRコードを読み取って注文をする仕組みも一般化しつつあります。これにより、従業員の対応が不要となり、人手不足の解消に貢献します。
6. AIチャットボットによる顧客対応
AIチャットボットを導入することで、顧客からの問い合わせ対応を自動化することができます。特に予約受付やメニューの説明など、単純な問い合わせに関してはチャットボットが即座に対応できるため、従業員が他の業務に集中できる環境が整います。さらに、24時間対応が可能なため、営業時間外でも顧客対応ができ、機会損失を防ぐことができます。
デジタルツール導入のメリット

飲食業界でデジタルツールを導入することには、多くのメリットがあります。
1. 業務効率の向上
デジタルツールの導入により、業務の自動化や効率化が進みます。例えば、オーダー管理システムを利用すれば、手書きの注文伝票を減らし、厨房との連携を強化することができます。また、POSシステムやシフト管理アプリを使用することで、店舗全体の運営がスムーズになり、従業員の負担が軽減されます。
2. 人件費の削減
自動化ツールを導入することで、従業員の数を削減できる可能性があります。配膳ロボットやデジタルオーダーシステムなどを使用すれば、少ない人数でも店舗運営が可能となり、結果として人件費を抑えることができます。
3. 顧客満足度の向上
デジタルツールを導入することで、顧客体験が向上します。迅速なオーダー受付やミスの少ないサービス提供が可能となり、顧客満足度が高まります。また、チャットボットを使用することで、顧客が疑問や問題をすぐに解決できる環境を整えることができます。
デジタルツール導入時の注意点
しかし、デジタルツールを導入する際にはいくつかの注意点もあります。
1. 初期コスト
デジタルツールの導入には、初期費用やメンテナンス費用がかかるため、事前に十分な資金計画を立てる必要があります。特に中小規模の飲食店にとっては、このコスト負担が大きいため、ROI(投資対効果)を慎重に見極める必要があります。
2. 従業員の教育
新しいツールを導入した場合、それに対応するための従業員のトレーニングが必要です。ツールを効果的に活用できるよう、導入前に従業員への十分な説明やサポート体制を整えることが求められます。
3. 顧客対応のバランス
デジタル化によって効率化が進む一方で、顧客とのコミュニケーションが希薄になりすぎないように注意が必要です。特に、温かみのある接客が求められる飲食業界では、デジタルツールに依存しすぎず、顧客との触れ合いを大切にするバランスが重要です。
補助金の活用
デジタルツールの導入にあたっては、初期費用が大きな負担となる場合があります。しかし、政府や自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、その負担を軽減することが可能です。
例えば、飲食業向けには「IT導入補助金」があります。この補助金は、中小企業がITツールを導入する際にかかる費用の一部を支援する制度で、飲食店でも活用可能です。POSシステムや勤怠管理システム、クラウド会計ソフトなど、多くのデジタルツールが対象となっています。
まとめ
飲食業界の人手不足は、労働環境や人口減少、賃金の競争力不足など、複合的な要因によって引き起こされています。しかし、デジタルツールを活用することで、業務の効率化や労働負担の軽減が期待できます。POSシステムやオーダー自動化システム、配膳ロボットなどのツールは、人手不足を補うだけでなく、経営の質を向上させる強力な手段となるでしょう。
また、デジタルツール導入の際にはコストやトレーニング、セキュリティの管理が重要です。補助金を活用して、効率的かつ効果的な導入を目指すことで、飲食店の持続的な成長が期待されます。
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