資金繰りの不安から逃れるには?キャッシュフローの見える化について
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年8月6日
- 読了時間: 6分
更新日:5月2日
1. 経営者が資金繰りに不安を感じる理由

中小企業の経営者にとって、資金繰りは常に大きな課題です。資金繰りとは、企業が日々の運営に必要な資金を確保し、支払い能力を維持することを指します。以下の理由から、経営者は資金繰りに不安を感じることが多いです。
1-1. 売上の変動
多くの企業にとって、売上は月によって大きく変動することがあります。特に季節商品を扱う企業やプロジェクトベースでの業務を行う企業では、売上の変動が顕著です。売上が高い月もあれば、低い月もあり、その差が大きい場合には、安定した資金繰りを維持することが難しくなります。このような売上の変動に対応するためには、常に予測と対策を講じる必要があります。
1-2. 経費の予測が難しい
経費もまた、予測が難しい要素の一つです。突然の修繕費や設備投資、新規事業の立ち上げに伴うコストなど、予期しない経費が発生することがあります。これらの予期しない経費は、資金繰りに大きな影響を与えるため、経営者は常に不安を感じています。
1-3. 取引先の支払い遅延
取引先からの支払いが遅れることも、資金繰りに不安を感じる大きな要因です。特に中小企業では、大企業からの支払い遅延が頻繁に発生することがあり、これが資金繰りに大きな影響を与えます。取引先の支払い遅延が続くと、経営者は資金繰りを維持するために短期借入を検討せざるを得ない状況に陥ることもあります。
1-4. キャッシュフローの見える化がされていない
最後に、経営者が資金繰りに不安を感じる大きな理由として、「キャッシュフローの見える化」がされていない点が挙げられます。キャッシュフローの見える化とは、企業の現金の流れを把握し、将来の資金繰りを予測するための取り組みです。
キャッシュフローが見える化されていないと、経営者は現金の流れを正確に把握できず、予期せぬ支出や収入の変動に対応することが難しくなります。これにより、資金繰りの不安が増大し、経営判断が遅れることにも繋がります。
2. 資金繰りの不安から逃れる方法

資金繰りの不安から解消されるためには、以下のような対策を講じることが重要です。
2-1. 利益を出し続ける
資金繰りの安定には、利益を出し続けることが基本です。利益が安定すれば、資金繰りに対する不安も減少します。利益を上げるためには、売上の増加とコストの管理が必要です。まず、売上を増加させるためには、マーケティング戦略を見直し、新たな顧客層の開拓や既存顧客のリピート率を向上させることが重要です。また、コスト削減には、効率的な仕入れや運営の見直しが求められます。
2-2. 資金調達をする
資金調達は、資金繰りの不安を解消するための重要な手段です。資金が不足している場合は、短期的な資金調達方法として、銀行融資やビジネスローンを検討することが考えられます。また、ファクタリングや売掛金の担保にした融資など、柔軟な資金調達手段も活用できます。これにより、一時的な資金不足を補い、事業を円滑に運営することができます。
2-3. 資金調達の多様化
資金調達の多様化は、リスクを分散するために非常に有効です。一つの資金調達方法に依存すると、その方法に問題が生じた際に大きな影響を受ける可能性があります。複数の資金調達手段を用意しておくことで、資金繰りの安定性を高めることができます。たとえば、エクイティファイナンス(株式発行による資金調達)やクラウドファンディングなども選択肢として検討すると良いでしょう。
2-4. キャッシュフローの見える化
キャッシュフローの見える化は、資金繰りの不安を解消するために欠かせません。キャッシュフローを可視化することで、資金の流れを正確に把握し、将来の資金需要を予測することができます。具体的には、キャッシュフロー計算書の作成や、資金繰り表の定期的な更新を行うことが重要です。これにより、資金の入金・出金のタイミングを把握し、適切な資金管理を行うことができます。
3. キャッシュフローの見える化の方法

キャッシュフローの見える化とは、企業の収入と支出を把握し、資金繰りを可視化することを指します。これにより、経営者は資金の流れをリアルタイムで把握し、適切な判断を下すことができるようになります。以下は、キャッシュフローを見える化するための具体的な方法です。
3-1. キャッシュフロー計算書を作成する
キャッシュフロー計算書は、企業の現金の入出金を示す重要な財務諸表です。これを作成することで、現金の流れを把握することができます。計算書には以下の3つのセクションがあります。
<営業活動によるキャッシュフロー>
日常のビジネス活動(売上、仕入れ、経費など)から得られる現金の流れです。
<投資活動によるキャッシュフロー>
設備投資や資産の購入・売却など、投資に関連する現金の流れです。
<財務活動によるキャッシュフロー>
資金調達や返済、配当など、財務活動に関連する現金の流れです。
これらのセクションを分けて計算することで、どの活動が現金の流れに影響を与えているのかがわかります。
3-2. 資金繰り表を作成する
資金繰り表は、日々の現金の入出金を管理するためのツールです。キャッシュフロー計算書が過去のデータを基に作成されるのに対し、資金繰り表は未来の予測に役立ちます。
<現金の予測>
未来の月ごとに入金予定や支出予定を記入し、現金の残高を予測します。
<予算と実績の比較>
実際の入金や支出が予算とどれくらい合致しているかを比較し、予算の修正や改善点を見つけます。
<実施方法>
スプレッドシートや会計ソフトを使用し、未来の入金や支出を見積もって資金繰り表を作成します。毎月の末に実績と比較することで、キャッシュフローの状況を確認します。
3-3. 月次・週次の現金フローを記録する
毎月または毎週の現金の流れを記録し、分析することが大切です。日々の現金の出入りを把握することで、異常な支出や収入のパターンを早期に発見できます。エクセルなどの表計算ソフトを使うと、簡単に記録と分析が可能です。
3-4. 財務管理ソフトを活用する
財務管理ソフトや会計ソフトを利用すると、キャッシュフローの見える化が簡単になります。これらのソフトは、収入や支出を自動で記録し、キャッシュフロー計算書や資金繰り表を作成する機能があります。初心者でも扱いやすく、グラフやチャートで視覚的に資金の流れを確認できるため、非常に便利です。
3-5. 予算管理を行う
年間または月間の予算を立て、それに基づいて資金の使い方を計画します。予算と実績を比較することで、資金の流れが計画通りに進んでいるかどうかを確認できます。予算管理は、予期しない支出に備えるためにも有効です。
まとめ

資金繰りの不安から逃れるためには、まずはキャッシュフローの見える化が重要です。予測と計画を立て、コスト削減や資金調達の多様化を図りながら、請求書の早期回収や緊急資金の確保を行うことが大切です。さらに、会計ソフトの導入や月次決算の実施、資金繰り表の作成などを通じて、キャッシュフローをリアルタイムで把握し、適切な判断を下すことが求められます。これらの対策を講じることで、経営者は資金繰りの不安から解放され、安心して経営に集中することができるでしょう。
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