店舗経営者が陥る効率化の罠!非効率なことがお客様の再来店につながる理由
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年8月26日
- 読了時間: 6分
現代のビジネス環境では、効率化が重要視されることが多いです。特に、店舗経営においては、効率的な運営が利益の最大化につながると考えられています。しかし、効率化に固執しすぎると、逆にお客様の満足度を下げ、再来店の機会を逃してしまうこともあります。本記事では、店舗経営者が陥りがちな効率化の罠について探り、なぜ非効率な部分が顧客の再来店を促すのか、その理由を詳しく説明します。
1. 効率化の追求が店舗経営に与える影響

効率化とは、時間やリソースを最適化し、無駄を省いて業務を遂行することです。これにより、コスト削減や業務の迅速化が図れるため、多くの店舗経営者が効率化を追求しています。しかし、効率化を追い求めるあまり、顧客に対するサービスの質や体験が犠牲になることがあります。例えば、セルフサービスの導入や、人員削減による接客の省略などが挙げられます。これにより、店舗の運営は効率化されるかもしれませんが、顧客にとっての体験価値が低下してしまう可能性があります。
2. なぜ効率化の罠に陥るのか?
2-1. コスト削減への過度な期待
店舗経営者が効率化に走る背景には、コスト削減への強い期待があります。限られたリソースで最大限の利益を出すことは経営の基本です。そのため、効率化がもたらす直接的なコスト削減効果に惹かれることが多いです。しかし、効率化が行き過ぎると、必要な人手を削減しすぎたり、顧客との接点を減らしてしまうことがあります。これにより、店舗の魅力が失われ、結果的に顧客離れを引き起こしてしまいます。
2-2. 短期的な成果に注力しすぎる
効率化は短期間で成果を上げやすいため、経営者がその即効性に魅力を感じることも一因です。効率的な業務プロセスを導入することで、短期的には生産性が向上し、コストも削減されます。しかし、これが長期的に見て顧客満足度の低下やリピート率の減少につながる可能性を見逃しがちです。
2-3. 顧客体験の価値を軽視する
効率化の追求が過度になると、顧客体験の重要性が軽視されることがあります。店舗経営者は、業務の効率化が売上に直結すると考えがちですが、実際には顧客との関係構築こそが長期的な売上増加につながる重要な要素です。顧客は、単なる商品やサービス以上の体験を求めています。そのため、効率化を進めるあまり、顧客体験を削減してしまうと、リピート客を逃すことになります。
3. 非効率な部分が生む顧客の「体験価値」

一方で、非効率な部分は、顧客にとっての特別な体験価値を生むことがあります。たとえば、店員との何気ない会話や、注文を受ける際の丁寧な対応などは、一見すると効率的ではないかもしれません。しかし、これらの非効率な行為が顧客にとっては心地よいサービスとなり、また訪れたいと思わせる要因になることがあります。特にリピーター獲得のためには、こうした「体験価値」が非常に重要です。
以下に、非効率なことが再来店につながる理由について詳しく説明していきます。
3-1. パーソナルな接客が信頼感を生む
非効率に見える接客方法の中には、顧客一人ひとりに寄り添った対応があります。これは確かに時間がかかり、効率的ではありませんが、顧客に特別感を与え、信頼感を築く大切な要素です。顧客は、自分のことを大切に扱ってくれる店舗に対して、好意を持ち、再度来店しようと考えます。
3-2. 問題解決能力のアピール
顧客が店舗に対して何らかの問題を持ち込んだ際、迅速かつ丁寧な対応を行うことで、顧客の満足度が大きく向上します。問題解決には時間がかかることもありますが、こうした対応を非効率と捉えてしまうと、顧客の信頼を失うことになります。問題解決に時間を惜しまない姿勢は、顧客の忠誠心を高め、再来店を促す重要な要素です。
3-3. 顧客との深い関係構築
効率化を優先するあまり、顧客とのコミュニケーションの機会を減らしてしまうと、顧客との関係性が希薄になります。非効率であっても、顧客とのコミュニケーションを大切にすることで、深い関係を築くことができます。これは、顧客が「また来たい」と思う理由となり、リピート率の向上につながります。
4. 顧客満足と効率化のバランスの重要性

顧客満足度を高めるためには、効率化と同時に非効率な部分を残すことも重要です。顧客は単に商品を購入するだけでなく、店舗での経験や接客を楽しみに来店します。そのため、すべてを効率化してしまうと、お店の個性や温かみが失われ、顧客が感じる魅力が減少してしまいます。非効率な部分をあえて残すことで、顧客にとっての特別な体験を提供し、再来店の動機付けにつなげることができます。
以下に、効率化を進めながら顧客体験を大切にする方法を説明していきます。
4-1. 業務の優先順位を明確にする
効率化を進める際には、すべての業務を一律に効率化するのではなく、優先順位をつけることが重要です。例えば、バックオフィス業務や在庫管理など、顧客に直接影響を与えない部分は効率化の対象とし、顧客対応や接客業務などは非効率でも価値のある行動として維持することが求められます。
4-2. 経営理念の浸透
効率化を進める際にも、従業員に対して経営理念をしっかりと浸透させることが重要です。顧客体験を大切にすることが店舗の価値であるということを従業員全員が理解し、その理念に基づいた行動が取れるようになると、効率化と顧客満足度の両立が可能になります。特に、従業員が自主的に考え行動することが求められる場面では、この理念が大きな指針となります。
4-3. 顧客フィードバックの活用
顧客体験を向上させるためには、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それを業務改善に活かすことが重要です。効率化の過程で失われがちな顧客視点を保つためにも、顧客の声を反映させたサービス改善を続けることが、長期的な成功につながります。
5. 店舗経営者への提言
店舗経営において効率化は必要ですが、それだけに固執することは危険です。特に中小企業の経営者は、大企業のように大規模な効率化を行うことは難しいため、自分たちの強みを生かした非効率さをあえて残すことが競争力の強化につながります。店舗の魅力を最大限に引き出し、顧客との信頼関係を築くことが、リピーターの獲得に重要です。
6. まとめ
効率化と非効率さは、店舗経営においては相反するものではありません。むしろ、適切なバランスを保ちながら運営することで、顧客にとって魅力的な体験を提供し、再来店を促すことが可能です。効率だけを追い求めるのではなく、非効率な部分も活用することで、店舗の独自性を発揮し、顧客にとって魅力的な店舗として成長していくことができるでしょう。店舗経営者の皆様も、この点を意識しながら、自店の運営を見直してみてはいかがでしょうか。
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