人手不足解消!女性が活躍できる環境づくりとは?~中小企業が昭和型経営から脱却するための戦略~
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年9月18日
- 読了時間: 9分
1. 女性の就業率上昇と共働き世帯の増加

近年、女性の社会進出は急速に進み、2023年には共働き世帯が1,200万世帯を超え、専業主婦世帯のおよそ3倍に達しています。この背景には、少子高齢化による労働力不足、働き方改革の推進、男女平等の意識の高まりなどが関係しています。
特に中小企業においては、女性の就業率が上昇する中で、女性が活躍できる環境づくりが企業の成長と持続可能な発展にとって重要な課題となっています。
しかし、現状では大企業に比べ、中小企業での女性の働きやすさや管理職への登用の実績はまだまだ低い状況です。中小企業が労働力不足を解消し、さらに持続的な成長を目指すためには、女性が安心して長期的に働ける職場環境を整えることが急務となっています。
本記事では、女性が活躍できる環境を整えるための課題と解決策を探り、特に地方の中小企業においてどのように実現できるかについて詳しく解説します。
2. 昭和型の「男社会経営」からの脱却
日本の多くの企業、とりわけ中小企業においては、いまだに昭和時代から続く「男社会型」の経営スタイルが色濃く残っています。これは、男性が中心となり、女性は補助的な役割を担うという意識が強く、結果として女性が積極的にキャリアを築く機会が制限されている状態です。
2-1. 男性優位の職場文化の影響
男性中心の職場文化では、女性が発言しづらい、意見が軽視される、あるいは女性のライフステージ(結婚、出産、育児)がキャリアの障害と見なされることが多いです。これにより、女性が自分の能力を十分に発揮できず、キャリアアップの機会を逃してしまうことが少なくありません。
また、性別役割分担意識が根強い職場では、女性が家庭の責任を一方的に背負わされるため、仕事との両立が難しくなり、結果的に働き続けることが困難になります。
2-2. 男社会型経営からの脱却
中小企業がこのような男性優位の職場文化から脱却するためには、まず経営者の意識改革が必要です。経営者自身が女性の能力を正当に評価し、彼女たちが管理職やリーダーシップを取る場を提供する姿勢を明確に示すことが重要です。
3. 女性従業員が管理職になりたがらない理由
女性が働きやすい環境を作るためには、女性自身がキャリアアップを目指す動機を持てる環境づくりが重要です。しかし、現状では多くの女性従業員が管理職を望んでいないという現実があります。その背景には以下のような要因が存在します。
3-1. ワークライフバランスへの不安
管理職になると仕事量や責任が増加し、結果として家庭との両立が難しくなるのではないかという不安が、女性のキャリアアップ意欲を阻む大きな要因です。特に家庭内の育児や介護の負担が大きい女性は、管理職への昇進を躊躇する傾向があります。
3-2. 役割モデルの不足
女性の管理職やリーダーが少ない企業では、女性社員が自分自身を将来の管理職としてイメージしづらく、昇進をためらうことが多くなります。女性管理職のロールモデルが少ない環境では、管理職になることでのメリットやキャリアのビジョンを描くことが難しくなります。
3-3. ハラスメントや偏見への懸念

女性が管理職になると、職場でのハラスメントや性別に基づく偏見を受ける可能性があるという懸念も存在します。特に、男性優位の文化が残る企業では、女性が権力を持つことに対する抵抗感が強く、心理的なプレッシャーが大きくなります。
4. 地方の中小企業における女性活躍推進のための取り組み
4-1. フレキシブルな働き方の導入
4.1.1 テレワークやフレックスタイム制の推進
地方の中小企業において、女性が働きやすい環境を提供するためには、まず「働き方の柔軟性」を確保することが不可欠です。特に育児や介護を担う女性にとって、従来の「9時から5時」の固定労働時間や、出社を前提とする働き方は大きな障害となることがあります。そこで、テレワークやフレックスタイム制を導入することが有効です。
テレワークでは、自宅やカフェなどから業務を遂行できるため、通勤時間の負担が減り、育児や家事と仕事を両立しやすくなります。また、フレックスタイム制を導入することで、勤務時間の選択肢が広がり、家庭の都合に合わせて仕事ができる環境を提供できます。
4.1.2 短時間勤務制度の導入
子育てや介護の負担を抱える女性が安心して働けるようにするためには、短時間勤務制度の導入も重要です。育児や介護を理由にフルタイム勤務が難しい場合でも、短時間勤務であれば継続して働き続けられるため、離職を防ぐことができます。このような制度は、地方の中小企業において特に有効であり、限られた労働力を最大限に活用することができます。
短時間勤務制度を整備する際には、従業員が時間の制約を感じず、能力を最大限に発揮できるように配慮することが重要です。また、給与や昇進において不公平感が生まれないようにするため、評価基準を明確にし、短時間勤務でもキャリアを積み上げられる仕組みを作ることが求められます。
4-2. 女性専用のキャリア支援制度

4.2.1 スキルアップ研修の提供
地方の中小企業が競争力を高めるためには、女性のキャリア形成を支援することが不可欠です。特に、スキルアップ研修やキャリア相談を定期的に行うことで、女性社員が自己成長を図り、管理職やリーダーシップを担う意欲を持つことが促されます。研修内容としては、業務スキルの向上だけでなく、リーダーシップやマネジメントスキルに特化したプログラムを提供することが重要です。
また、キャリア支援を行う際には、業務外の時間を活用したオンライン研修やワークショップなどを活用することで、育児や介護を担う女性も参加しやすくする工夫が求められます。これにより、時間的な制約を受けることなく、長期的なキャリア形成が可能になります。
4.2.2 メンター制度の導入
地方の中小企業では、女性が管理職やリーダーシップを取る機会が少ないため、女性社員が将来のキャリアを具体的にイメージしづらい状況があります。そのため、女性の先輩社員や管理職によるメンター制度を導入することが有効です。メンター制度は、後輩社員がロールモデルとして先輩の経験を参考にし、キャリアアップに対する意欲を高める効果があります。
特に女性管理職の数が少ない場合でも、外部からメンターを招くことで、外部の知見を取り入れながら女性社員のキャリア形成を支援することが可能です。メンター制度は、キャリアパスの具体化に役立つだけでなく、職場でのメンタルヘルスケアや悩み相談の場としても機能し、女性社員がより安心して働ける環境づくりにも寄与します。
4-3. 育児や介護を支援する制度の整備
4.3.1 企業内保育所の設置や費用補助
育児と仕事の両立を支援するために、企業内保育所の設置や保育費用の補助制度を提供することが有効です。地方の中小企業では、保育所が不足している地域も多く、働く女性にとって保育施設の確保が大きな課題となっています。そのため、企業内で保育施設を提供することや、地域の保育所と提携して従業員が優先的に利用できる枠を確保することが、女性の働きやすさを向上させます。
また、保育費用の補助制度を導入することで、経済的な負担を軽減し、女性社員が安心して働き続けられる環境を整えることも可能です。これにより、子育てとキャリアを両立させるための支援が充実し、女性が長期的に働ける環境が作られます。
4.3.2 介護支援制度の導入
高齢化が進む中で、介護の負担を抱える女性社員も増加しています。そのため、介護休暇や介護支援制度の導入も重要な取り組みの一つです。例えば、介護休暇を柔軟に取得できる制度や、介護サービスの利用にかかる費用を一部補助する制度を提供することで、介護の負担を軽減し、仕事との両立を支援します。
地方の中小企業がこうした制度を導入することにより、介護に直面しても職場を離れずに働き続けられる環境を整えることができます。これにより、労働力の流出を防ぎ、女性社員がキャリアを中断することなく働き続けることが可能となります。
4-4. 女性管理職の育成と登用
4.4.1 管理職候補としての女性の積極的育成
女性が管理職に進むことをためらう要因の一つとして、管理職のロールモデル不足が挙げられます。特に地方の中小企業では、管理職に占める女性の割合が非常に少なく、女性社員が自分自身を将来の管理職としてイメージすることが難しい状況です。このため、企業は女性社員を管理職候補として積極的に育成し、彼女たちがリーダーシップを発揮できる機会を提供することが重要です。
具体的な施策としては、女性社員を対象とした管理職育成プログラムを設け、リーダーシップスキルやマネジメントスキルを向上させる研修を定期的に実施することが挙げられます。また、女性管理職候補が実際の管理職に挑戦できる場を用意し、成功体験を積ませることも有効です。
4.4.2 女性管理職の登用とロールモデルの増加
女性管理職の育成と並行して、実際に管理職として登用することが、女性のキャリア意欲を高める上で重要です。企業は、能力や意欲に基づいて女性を積極的に登用し、リーダーシップを発揮する場を提供することで、企業全体の風土を変えることができます。
女性管理職が増えることで、他の女性社員にとってもロールモデルとなり、将来のキャリアに対するビジョンが具体化します。また、男女問わず、多様な視点を持つ管理職が増えることで、企業の意思決定がより多角的になり、業績向上にもつながる可能性があります。
5. まとめ
人手不足が深刻化する中で、女性の労働力は企業の成長に欠かせない重要な要素です。特に中小企業においては、女性が安心して働ける環境を整えることが、企業の競争力を強化し、持続的な発展を支える鍵となります。昭和型の「男社会経営」から脱却し、女性がリーダーシップを発揮できる職場文化を築くことは、企業の将来を大きく左右する要素であると言えます。
フレキシブルな働き方の導入や女性専用のキャリア支援制度の整備を進め、女性が管理職としても活躍できる職場環境を作り上げることが、これからの中小企業にとって必須の課題となるでしょう。
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