事業承継の進め方!子供に事業を引き継がせるための準備方法
- 中小企業診断士 田村雅紀

- 2024年8月26日
- 読了時間: 6分
中小企業の経営者にとって、事業承継は避けて通れない課題です。特に家族経営の企業では、子供に事業を引き継がせたいと考えることが多いでしょう。しかし、事業承継は単なる家業の引き継ぎではなく、企業の存続と成長を左右する重大なプロセスです。この記事では、子供に事業を円滑に引き継ぐための具体的な準備方法とポイントについて解説します。
1. 事業承継の重要性を理解する

まず、事業承継が企業にとってどれほど重要かを再確認しましょう。事業承継がうまくいかないと、企業の存続が危ぶまれ、社員や取引先、顧客に多大な影響を与える可能性があります。事業承継は、企業の資産や経営権の引き継ぎだけでなく、経営理念や企業文化の継承も含まれます。特に中小企業では、創業者のビジョンや価値観が企業の基盤となっていることが多いため、これらを次世代に伝えることが重要です。
2. 子供に引き継がせる準備の第一歩:コミュニケーション
子供に事業を引き継がせるための第一歩は、オープンで透明なコミュニケーションです。多くのケースで、親が子供に事業を引き継ぐことを望んでいても、その意向が十分に伝わっていなかったり、子供自身が引き継ぐ意志を明確にしていなかったりします。このようなコミュニケーション不足が、後のトラブルの原因となり得ます。
まず、子供と将来の事業承継について率直に話し合いましょう。子供が引き継ぐ意志を持っているか、また、そのために必要なスキルや経験を積む意欲があるかを確認することが重要です。もし子供がまだ明確な意志を持っていない場合は、無理強いせず、じっくりと話し合いを重ね、子供自身の考えを尊重することが大切です。
3. 後継者育成プランの策定
事業承継を成功させるためには、子供が後継者として必要な能力を身に付けるための育成プランが不可欠です。育成プランには、以下の要素を含めることが考えられます。
3-1. 経営スキルの習得
経営者としての基礎的なスキルを身につけるために、経営管理や財務管理、人材管理などの知識を学ぶ必要があります。また、経営の現場で実践的な経験を積むことも重要です。例えば、特定の部門を任せることで、意思決定の経験を積ませることができます。
3-2. 企業文化の理解と継承
経営者としての能力だけでなく、企業の価値観や文化を理解し、それを次世代に伝えることも重要です。創業者が築き上げた企業の理念やビジョンを後継者が受け継ぐことで、企業のアイデンティティが守られます。
3-3. 外部での経験
可能であれば、子供が外部の企業で働き、異なる視点やスキルを身につけることも有効です。他社での経験は、新しいアイデアや革新的な考え方を持ち帰るきっかけとなり、企業の発展に寄与する可能性があります。
4. 事業承継の計画策定
事業承継のプロセスは、長期間にわたって計画的に進める必要があります。承継計画には、具体的なスケジュールや役割分担を明確にし、関係者全員が共通の認識を持つことが求められます。
4-1. スケジュールの策定
事業承継には、ある程度の時間が必要です。計画的に進めるために、承継のタイミングや段階的な引き継ぎのスケジュールを決めましょう。例えば、まず子供が経営に参画し、その後段階的に権限を委譲するプロセスを設けるとよいでしょう。
4-2. 役割分担の明確化
承継プロセスでは、現経営者と後継者の役割分担を明確にすることが重要です。初期段階では、現経営者が主要な意思決定を行い、徐々に後継者に権限を移譲する形が一般的です。この際、現経営者が「引き際」をしっかりと見極めることが、スムーズな承継に繋がります。
4-3. 関係者の理解と協力を得る
事業承継には、社員や取引先、金融機関など、さまざまな関係者の理解と協力が必要です。特に社員に対しては、新たな経営者に対する信頼を築くために、後継者の能力や意欲を十分に示すことが重要です。
5. 法務・税務の整備

事業承継においては、法務や税務の面での準備も欠かせません。特に、相続税や贈与税などの税務問題は、事業承継を円滑に進める上で大きな課題となります。以下のポイントを押さえておきましょう。
5-1. 相続税対策
事業承継に伴う相続税は、後継者にとって大きな負担となる場合があります。そのため、事前に相続税対策を講じておくことが重要です。例えば、事業承継税制の適用を受けることで、相続税の負担を軽減することが可能です。
5-2. 贈与税の対策
事業承継前に一部の財産を子供に贈与することで、相続時の税負担を軽減する方法もあります。贈与税の非課税枠を活用することで、計画的に財産を移転することができます。
6. 事業承継後のサポート体制
事業承継が完了した後も、後継者が順調に企業を運営できるよう、サポート体制を整えておくことが重要です。
6-1. メンター制度の活用
後継者が経営の課題に直面した際に、相談できるメンターを持つことは大きな助けになります。メンターとしては、現経営者が引き続きサポートする形もありますが、外部の専門家や他の経営者を活用することも有効です。
6-2. 継続的な学びの場の提供
後継者が経営者として成長を続けるためには、継続的な学びが不可欠です。例えば、経営に関するセミナーや勉強会への参加、または専門書の読書を奨励するなど、学びの機会を提供しましょう。
6-3. 社員との信頼関係の構築
新たな経営者が社員との信頼関係を築くことは、企業の安定した運営に欠かせません。社員とのコミュニケーションを密に取り、共通の目標に向かってチームをまとめるリーダーシップが求められます。
7. 事業承継における注意点

事業承継を進めるにあたって、いくつかの注意点があります。これらを踏まえて準備を進めることで、事業承継の成功率を高めることができます。
7-1. 後継者選びの慎重さ
後継者として子供を選ぶ場合でも、必ずしも適任であるとは限りません。後継者には経営能力やリーダーシップだけでなく、従業員や取引先との良好な関係を築ける人間性も求められます。子供が本当に経営者としての素質を持っているか、客観的に判断することが必要です。
7-2. 経営の透明性の確保
事業承継に際して、経営の透明性を確保することは非常に重要です。後継者に全ての情報が正確に伝わるよう、財務状況や経営戦略についてオープンに話し合いを行いましょう。また、社員や取引先にも適切なタイミングで情報を開示し、信頼を維持することが求められます。
7-3. 感情的な対立を避ける
家族間での事業承継では、感情的な対立が発生しやすい傾向があります。事業承継の過程で感情的な衝突を避けるためには、客観的な立場から話し合いを進めることが重要です。第三者のアドバイザーやコンサルタントを活用することで、冷静な対応を保つことができます。
まとめ
事業承継は中小企業にとって避けられない課題ですが、適切な準備と心構えがあれば、そのプロセスはスムーズに進められます。後継者の育成、法務・税務の整備、計画的な承継プロセスの実行、そして関係者とのコミュニケーションを大切にすることで、事業承継の成功を目指しましょう。経営者として、未来の企業のために今からできることを始めることが、企業の持続的な成長と発展に繋がります。
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