中小企業経営者は知らないとやばい債務超過とは!?赤字と債務超過の違い
- 中小企業診断士 田村雅紀
- 2024年8月6日
- 読了時間: 5分
中小企業の経営者にとって、企業の財務状況を正確に把握することは非常に重要です。その中でも「債務超過」という状況は、経営にとって深刻な問題となり得ます。しかし、赤字と債務超過の違いや、その具体的な対処法については理解が曖昧な場合も多いでしょう。この記事では、債務超過とは何か、赤字との違い、債務超過がもたらす影響、そしてその脱却方法について詳しく解説します。
1. 債務超過とは?

債務超過とは、企業の総資産よりも総負債が上回っている状態を指します。簡単に言えば、企業が持っている全ての資産を売却しても、負債を全て返済することができない状態です。債務超過はバランスシート(貸借対照表)上で確認でき、資産の部より負債の部が大きい場合に発生します。
例として、企業の総資産が1億円、総負債が1億2千万円の場合、差額の2千万円が債務超過となります。この状態が続くと、企業は経済的に持続可能でなくなり、最悪の場合、破産や事業の停止に追い込まれる可能性があります。
2. 赤字と債務超過の違い

債務超過と赤字は混同されがちですが、実際には異なる概念です。
<赤字>
企業の収益が費用を下回り、利益がマイナスになる状態です。これは損益計算書で確認でき、単年度の業績を示します。赤字が続くと自己資本が減少し、最終的には債務超過に繋がることがあります。
<債務超過>
上述の通り、総資産よりも総負債が大きい状態です。これはバランスシートで確認でき、企業全体の財務状況を示します。
つまり、赤字は短期的な業績の問題であり、債務超過は長期的な財務状態の問題と言えます。赤字が続くことで最終的に債務超過に陥ることもありますが、単年度の赤字が直ちに債務超過を意味するわけではありません。
3. 債務超過だとどうなるのか?
債務超過状態が続くと、企業は様々な困難に直面します。
3-1. 資金調達の困難
債務超過の状態では、金融機関からの新たな融資が困難になります。既存の借入金の返済が滞る可能性が高いため、金融機関はリスクを避けるために融資を控える傾向があります。これにより、資金調達が一層厳しくなり、経営の自由度が制限されます。
3-2. 取引先からの信用低下
債務超過は企業の信用を大きく損ないます。取引先や金融機関からの信頼が低下し、新たな取引や融資が難しくなります。特に中小企業にとっては、取引先との信用関係が重要であり、信用の低下は事業の存続に直結する問題です。
3-3. 経営の不安定化
債務超過は経営者や従業員の士気に悪影響を与え、企業全体の士気が低下します。これにより、生産性の低下や優秀な人材の流出が懸念されます。
4. 債務超過から脱却するには?

債務超過から脱却するためには、以下のような対策が考えられます。
4-1. コスト削減
経費の見直しや効率化を図り、無駄なコストを削減することが重要です。例えば、在庫管理の改善や購買コストの削減、不要な資産の売却などが効果的です。
4-2. 収益性の向上
既存事業の収益性を向上させるための戦略を立て、新規事業の開拓やサービスの多様化を図ります。マーケティング戦略の見直しや顧客ニーズに合った商品・サービスの提供が鍵となります。
4-3. 資産の売却
不要な資産や非戦略的な資産を売却し、負債の返済に充てることが有効です。これにより、資金繰りが改善される可能性があります。
4-4. 資本注入
新たな投資家からの資本注入や、既存の株主からの増資を図ります。これにより、自己資本を増強し、債務超過状態を解消することができます。
4-5. 債務のリスケジュール
銀行や債権者と交渉し、債務の返済条件を見直すことも有効です。返済期間の延長や利息の減免などを通じて、資金繰りの改善を図ります。
5. 債務超過脱却のための具体的なアクションプラン

債務超過から脱却するためには、具体的なアクションプランを策定し、実行することが必要です。以下に、その具体例を示します。
5-1. 財務状況の把握
現在の財務状況を正確に把握し、問題点を洗い出します。バランスシートや損益計算書を詳細に分析し、債務超過の原因を特定します。
5-2. 戦略的な計画の策定
短期的・中期的な経営計画を策定し、具体的な目標とアクションプランを明確にします。計画には、コスト削減策、収益向上策、資産売却計画、資本注入計画などが含まれます。
5-3. 関係者との協議
銀行や債権者、取引先、投資家などの関係者と協議し、支援や協力を仰ぎます。信頼関係を築き、協力的な姿勢を示すことが重要です。
5-4. 実行とモニタリング
策定した計画を実行し、定期的に進捗をモニタリングします。計画の進行状況を確認し、必要に応じて修正を行います。
5-5. 専門家の活用
債務超過から脱却することは容易ではありません。財務コンサルタントや経営コンサルタントの力を借りることで、客観的な視点からアドバイスを受けることができます。専門家の知識と経験を活用し、最適な対策を講じることが重要です。
まとめ
債務超過は、企業の存続に深刻な影響を及ぼす重大な問題です。しかし、適切な対策を講じることで、債務超過から脱却し、健全な経営に戻ることは可能です。経営者は、財務状況を正確に把握し、具体的なアクションプランを策定・実行することが求められます。債務超過のリスクを理解し、早期に対策を講じることで、企業の持続的な成長を実現しましょう。
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